23年度 定時総会開く(6月11日)

6月11日午後1時30分より部落問題研究所において、23年度定時総会を開いた。
開会の後、会員物故者に黙祷をささげたあと、梅本哲世理事長が開会挨拶を行なった(後掲)。議長には、井手幸喜氏(京都市)を、書記に出渕登喜子氏(事務局)を選任した。


 

日本史研究会、全国人権連等からのメッセージが紹介された後、議事に入り、第1号議案「22年度事業報告承認の件」(梅田理事提案)、第2号議案「22年度貸借対照表・正味財産増減計算書・財産目録の承認の件」(梅本理事長提案)、監査報告(藤本清二郎監事)がなされ、若干の質疑ののち、承認された。総会後直ちに開催された第2回理事会で、互選によって理事長に梅本哲世氏、常務理事に梅田修氏が選任された。なお、6年間監事を務められた矢頭正明氏は退任となり、新たな監事として後藤貴三恵氏が選任された。

理事長挨拶 2023.6.11定時総会

2023年度定時総会にあたり、ご挨拶を申し上げます。
 アジア太平洋戦争の惨禍を経験した日本は、「戦争は最大の人権侵害である」という反省に基づいて、日本国憲法のもとで恒久平和主義の原則を堅持してきました。ところが、岸田内閣はウクライナ戦争や米中対立の深刻化のなかで、2022年12月に「安保3文書」を閣議決定し、従来の「専守防衛」を基本とする安保政策から、「敵基地攻撃能力」を保有し、集団自衛権行使による米軍との共同作戦を実施する安保政策へ大転換しました。日本はいま「戦争か平和か」という歴史的岐路に立っています。
日本経済の長期的停滞が続き、新自由政策による格差・貧困の拡大に加え、コロナ禍、物価騰貴、実質賃金の低下などによって国民生活が悪化し、低所得層や社会的弱者にますます矛盾がしわ寄せされています。そのなかで、生活と暮らし、人権と民主主義を守り発展させる運動が様々な分野で起こり、広がっています。その一方で、政治革新をめざす流れと市民的立ち上がりを分断、分裂させる動きもまた激しくなっています。
 部落問題においても逆流が激化しています。昨年の2022年3月3日は全国水平社創立100周年でしたが、その前後の関連報道では、インターネット上の「部落」情報などを理由に、「部落差別は依然として根強く存在している」という論調が氾濫し、それが「部落差別解消推進法」の一層の具体化と、包括的な差別禁止法や人権救済法の制定を求める動きにつながっています。その影響は、2018年の法務省「依命通知」の「同和地域の識別情報の提示は、原則として削除要請等の措置の対象とすべきである」との文言や、「全国部落調査」復刻版のインターネットでの公開に対して、プライバシーの侵害をみとめた2021年の東京地裁の判決にも反映しています。
 このような状況のなかで、和歌山県立図書館における部落問題関係図書の閲覧制限問題が明らかになりました。これは「旧同和地区」の地名記載を理由に閲覧制限の措置をしたものですが、有志の方々や部落問題研究所の取り組みにより閲覧制限は解除されました。これは今後の活動につながる大きな成果です。
 部落問題研究所は、解決過程のいっそうの進展を阻害するさまざまな事態、動向について、今日の人権と民主主義をめぐる状況と運動を考慮しつつ、研究・普及活動を強めていきます。皆様の変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。