「部落差別の実態に係る調査結果」は何を明らかにしたのか―同和地区の表示は差別にあたるのかにもふれて―
開催日 2022年12月4日
報告者 梅田 修
所 属 部落問題研究所
2022年度第3回教育研究会が、12月4日(日)に開催された。報告は、梅田修「『部落差別の実態に係る調査結果』は何を明らかにしたのか―同和地区の表示は差別にあたるのかにもふれて」である。
梅田は、まず「部落差別解消推進法」(2016年)第6条に規定する「部落差別の実態に係る調査」について、調査内容・調査方法を検討した有識者会議の『部落差別解消推進法6条の調査に係る調査研究報告書』(2018年)に言及。参議院法務委員会附帯決議の影響もあって、「人や地域を特定することを伴う調査は実施しない」「学校教育現場における調査の必要性は認められない」ことを確認していたことを紹介。これによって、今後生活実態調査は困難になったことを指摘した。さらに、インターネット上の部落差別に関わる「差別情報」の把握も「必要であるものの実施は困難を極める」として、「差別情報の把握」は実質上困難だと結論づけていたことを紹介した。
さらに、法務省人権擁護局『部落差別の実態に係る調査結果報告書』(2020年6月)の中の「一般国民に対する意識調査」結果を紹介。部落差別が不当な差別であることを「知っている」(85.8%)の比率が高いこと、部落差別の体験が「ない」(81.5%)の比率が高いこと、また「部落差別がいまだにある」と答えた人の大部分が「実体験以外に基づいて」判断していることから、身近なところでの部落差別の体験は希薄になってきていることの反映だと指摘。
議論では、部落差別に関わる生活実態調査はもはや困難になっており、今後は人権擁護機関への相談件数の把握や国民の人権意識調査に限定されるべきなどが問題となった。(梅田修)