22年度 定時総会開く(6月12日)

6月12日午後1時30分より部落問題研究所において、22年度定時総会を開いた。
 開会の後、会員物故者に黙祷をささげたあと、梅本哲世理事長が開会挨拶を行なった(後掲)。議長には、小村和義氏(京都市)を、書記に出渕登喜子氏(事務局)を選任した。
 

日本史研究会、全国人権連等からのメッセージが紹介された後、議事に入り、第1号議案「21年度事業報告承認の件」(梅田理事提案)、第2号議案「21年度貸借対照表・正味財産増減計算書・財産目録の承認の件」(梅本理事長提案)、監査報告(藤本清二郎監事)がなされ、若干の質疑ののち、承認された。

理事長挨拶 2022.6.12定時総会

2022年度定時総会にあたり、ご挨拶を申し上げます。
 新型コロナの感染は依然として深刻な状況が続いています。そのためこの総会は、直接参加だけでなくオンライン参加も併用した形で実施することになりました。以下、この1年間に部落問題研究所が行ってきた主な活動について、簡単に述べたいと思います。
 第1に、ロシアのウクライナ侵略に対して、部落問題研究所は3月4日に「ロシアによるウクライナへの侵攻について」という理事長談話を出して、国連憲章、国際法に違反したロシアを厳しく批判し、ウクライナからのロシア軍の即時・完全・無条件の撤退を要求しました。
 第2に、研究所はハーバード大学のジョン・マーク・ラムザイヤー氏が発表した部落問題に関する論文への批判を行いました。部落問題研究所理事会・研究委員会は、2021年8月4日に声明「ジョン・マーク・ラムザイヤー氏の部落問題に関する論文について」を発表してこれを批判するとともに、理事の石倉康次氏執筆のラムザイヤー批判論文を『人権と部落問題』2022年3月号に掲載しました。
 第3に、和歌山県立図書館による部落問題関係図書の閲覧制限問題が明るみに出ました。図書館側は「部落の地名等が掲載されている」ことを該当図書の利用制限の根拠にしていますが、これは「図書館の自由」の原則に反し、国民の知る自由、学問・表現の自由を侵害する措置です。部落問題研究所はこの問題を重視し、今後取り組みを強化していきます。
 第4に、部落問題研究所は科研費の助成も受けて共同研究を積極的に進めています。藤本清二郎氏を研究代表者とする「行き倒れ」の研究が2020年度に終了し、その成果を『「行倒れ」の歴史的研究─移動する弱者とその救済』として刊行しました。また、2021年度から、竹永三男氏を研究代表者とする「奈良県の地域構造変容と部落問題に関する歴史的研究-地域構造分析・比較研究を通して」に取り組んでいます。さらに、2022年度は科研費に6件応募して、3件が採択されました。
今後とも、若手の研究者をも巻き込んで研究活動を発展させていきたいと考えています。
 第5に、今年は全国水平社創立100周年にあたります。部落問題研究所は全国人権連などの関係諸団体と協力して、記念動画の作成・HPでの解放運動の担い手の紹介などの事業に取り組みました。また、研究所としても、木村京太郎著『水平社運動の思い出』の復刻、『人権と部落問題』『部落問題研究』での全国水平社創立100周年記念特集号の発行などをおこないました。多くのマスコミが水平社創立と部落問題について取り上げましたが、その主たる論調は「部落差別は依然として根強く存在している」というものでした。研究所は『部落問題解決過程の研究』全5巻などで、社会問題としての部落問題は基本的に解決段階に達したことを明らかにしました。今後これらの研究から得られた経験と教訓を国民的な達成として共有する活動を強めていきたいと思います。 
 最後に、研究所の財政についてです。2021年度は大口寄付の取り組みなどで、なんとか黒字となりましたが、依然として財政危機が続いています。募金などの収入増加や支出の削減の努力を引き続き行っていきます。今後とも皆様のご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。