2020年度事業計画  研究活動の基本方針

公益社団法人部落問題研究所(以下、部落問題研究所)は、日本社会の民主主義的発展のために、激動する内外情勢を念頭におきつつ、解決過程にある部落問題をはじめ、日本社会が直面している人権・民主主義・人間発達に関する諸問題について研究し、その成果を普及する必要がある。

そのため、部落問題研究所の長中期研究課題を明確化しつつ、当面する研究課題及び研究方針を立てる必要がある。

(1)世界と東アジアの激動(略)
(2)日本の政治と社会の激動(略)
(3)部落問題の解決過程と新たな課題の明確化
 以上のような情勢のもとで、部落問題研究所の研究課題と社会的役割を明確にしなければならない。
 近代日本の民主主義的発展にとってきわめて重要な歴史的課題であった部落問題は、基本的に解決段階に到達している。しかし、部落問題解決の到達点と現状が国民に十分理解されていない状況がある。その理由を分析するとともに、そのこともふまえて解決過程の到達点を具体的に研究する必要がある。
 私たちは、日本社会の民主主義的成熟が重要であり、新自由主義段階の地域や社会の分断・分裂・敵対・非和解・非寛容とその克服の問題がますます重要になっていると考え、部落問題解決過程とその歴史的条件の新たな究明が重要であり、人文社会諸科学における部落問題とその解決に関する積極的意義を明確にする必要がある。
(4)部落問題研究所の課題
 部落問題研究所は、現在財政上の大きな困難を抱えているが、「部落差別解消推進法」を利用した「同和対策」継続の動きにも十分留意し、今日的に要請されている社会的責任を果たすために研究課題と事業計画を具体化し、財政危機克服の課題と一体で活動を進める必要がある。
 第一に、部落問題研究所は、これまで人権、地域、これを包含する社会の諸問題について理論的実証的研究を行なうことを課題としてきたが、日本社会の民主主義的発展に寄与するため、学際的研究を重視し、そのいっそうの発展をめざす必要がある。
 第二に、二〇二二年が「水平社創立一〇〇年」であることも考慮し、いっそう広い視野から引き続き部落問題解決過程の現実の到達点と研究の到達点を明らかにし、学際的交流を促進する必要がある。
 第三に、それらの活動と並行して、国民的文化遺産ともいえる部落問題研究所所蔵資料の活用・保存のため、具体的方策を立てる必要がある。