2019年6月9日 於:部落問題研究所

 6月9日(日)、2019年度第1回目の教育研究会を開催した。
  報告は、折出健二(愛知教育大学名誉教授)「対話的生き方と暴力克服の教育の可能性―道徳『特別教科』化の問題点も視野において」である。
 折出さんは、まず道徳教育の三つの系譜にふれた。一つは、道徳的教えは心の中に内面化されなければならないとする考え。これは戦前の修身教育に代表される。二つは、何が善であるかを知ることが道徳性の基本であるとする考え。これは「道徳の時間」特設の底流にある考えである。三つは、他者との協働を伴う活動で学習されるものはすべて道徳的知性であるとする考え。折出さんは、三つめの考えに立つ。
 折出さんは、この観点から「道徳科」を批判する。つまり、子どもの「いじめ」や「荒れ」の背景には、子どもたちの人間関係における暴力的要素の増幅、行動の暴力的な傾向があることから、子どもたちが学級などの共同生活の中で実際に体験しながら身につけていく他者認識や相互性の感覚などの社会的な能力を育てることが課題なのに、それを避けて「教科」重視に傾き、主知主義、価値判断の強化でこれに対応しようとしていることを問題にした。
 討論では、小学校における暴力行為の増加、対話による教育の可能性などが問題になった。

(梅田修)