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56回部落問題研究者全国集会参加者の感想
 2018年10月27日・28 於:同志社女子大学今出川キャンパス

  10月27(土)〜28(日)の両日、京都市・同志社女子大学今出川キャンパスで第56回部落問題研究者全国集会を開催しました。
 第1日は、全体会で尾川理事長の開会の挨拶の後、研究所は本年創立70周年を迎えたところから、第1部として、「部落問題研究所70年の歩み」を東上高志顧問、成澤榮壽前理事長が報告した。
 続いて第2部「地域における民主主義の成長と部落問題の解決過程」について、「1970〜80年代の奈良県を事例に」竹末勤氏が報告し、梅本哲世・岡田雅一氏がコメントした。
 さらに、「住民の自立と地域の教育力―和歌山県の同和地区に即して―」梅田修氏が報告した。
 第2日は、@歴史T、A歴史U、V現状分析・理論、C教育、D思想・文化の5分科会で報告、討論が行なわれました。
 以下、いくつかの「参加記」を寄せてもらった。
  
※なお、『人権と部落問題』2019年二月号に概要報告が掲載されます。
  ※詳細報告と討議内容の詳細は紀要『部落問題研究』229号(2019年4月発行予定)に掲載されます。

 
 ●参加記

全体集会 『70周年を迎える』    小村和義(京都市職員連合部落問題学習協議会)

分科会 『歴史 Uに参加して』 成瀬公策(日本近代史研究所)

現状分析・理論分科会  陳 意(佛教大学・研究員) 

全体集会−参加記 『70周年を迎える』
   小村和義(京都市職員連合部落問題学習協議会)

 今年度の研究者集会の全体会は,部落問題研究所結成70周年ということもあり2部構成。第1部は顧問である東上高志さん(88歳)と前理事長である成澤榮壽さん(84歳)の講演,第2部は奈良県と和歌山県の取組を事例に地域における民主主義の成長と部落問題の解決過程を検証しようというものでした。
私が研究所に関わるきっかけは,京都市役所で働く仲間による学習会へ誘われたこと。文化厚生会館事件の経過も知らずに学習会の会場である川端分館を初めて訪れ,「研究所」とは名ばかりの所屋と環境に驚きながら東上さんから御指導いただいたのですが,以後,杉之原理事長をはじめ,役員,所員の皆さんには様々な形でお世話になりました。
東上さんは近著『部落問題解決過程の証言』のあとがきで「取材と調査と『実践』をミックスした」と振り返っておられますが,私なりに付け加えれば当時の研究所は組織者としての役割も発揮していたと思います。私たちにとっても夏期講座への参画や座談会での発言自体が当事者を成長させるものであり,後の言葉でいえば「歴史的後進性の克服」につながる過程であったと言えます。研究所がそうした役割を果たした時代があったことを改めて思わずにいられません。
ところで,東上さんの講演はレジメを離れてもっぱら第2部のテーマである「地域」「民主主義」に絡めたもの。まだまだ研究の前線に立とうという気概が感じられました。
成澤さんが理事長を務められた時期は,「部落問題解決過程」がキーワードになると同時に「財政困窮」が前面にならざるを得ない状況でした。「波風が激しく立っている時期にも,集団的にも個人的にも地道に研究を進めてきた」研究所が,「『平時』の研究を発展させる条件が生じた」下でいかに生き延びるか。職員の賃金減額など「人権問題を研究する機関としてあるまじき実績」とされていますが,「経営」に腐心されてきた裏話(苦労話)を,いつかじっくりとお聞きすることができればと思っています。

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分科会参加記 『歴史 Uに参加して』 
   成瀬公策(日本近代史研究者)

 今後の研究課題として1950年代の愛知県平和運動史を探究したいと考えており、今回の分科会テーマ「戦後日本の地域における『デモクラシー』」というタイトルに魅力を感じて、久しぶりに全国集会に参加することに決め、愛知県から京都の地をはるばる訪れました。
高田・中村報告は、戦時体制下から50年代前半とほぼ同じ時期に対象として、しかも国立町と八王子市という地理的にも近接し中央線沿線である地域が取り上げられました。両報告ともに、理論的に緻密であり、かつ実証的にも豊富な資料が示され、きわめてレベルの高いものであったと言えます。高田報告は、自身の日常生活空間でもある地域の歴史を丹念に掘り起こしたものであり、深い感銘を受けました。地域社会に根付く多様な住民運動が、取り上げられたのですが、私としては、『ぼろくそ詩集』を発行した誌サークルの存在が興味深い存在でした。詩の創作・合評=自己の生活と内面を省察しつつ、自分自身の凝縮されたことばで表現し、なかまたちと共有する行為を通じて、こころと身体は、まぎれもなく自身のものであるとの認識を獲得する契機になったのではないかと想像を膨らませました。中村報告は、四十年代以降の市議選、市長選などの結果を詳細に追うことによって、地域の政治構造の連続と変化を明らかにしようとする意欲的なものでした。敗戦直後の社会党が八王子市においては露天商組合の幹部小島鉄広が担っていたのは、新鮮な驚きがありました。また、零細な絹織物業者たちが、戦時体制下から50年代前半という激動の時代をどのように経営の維持を図ったのか、個別具体的な事例を知りたくなりました。

参加者からは、多様な観点から、質問や意見が出され活発で濃密な討論がされました。とりわけ都市部と農村、新住民と農民との関係性について、議論が比較的集中しました。私にとっては、実り多き秋の一日であったことを記して、ペンを置きます。
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現状分析・理論分科会参加記
  
    陳 意(佛教大学・研究員) 

 この研究集会に参加するのが三回目となっております。この度、全体会以外「地域における人権課題と部落問題」という分科会に出席させていただきました。荻原園子さん、矢頭正明さん、鈴木元さんから貴重な報告を聞かせていただきました。
 荻原さんは「生江孝之と部落問題・再論」という講義をなされました。大阪府茨木市から来られた矢頭さんが地域活動について話をしました。詐欺の被害者となった高齢者がわざわざ名古屋に現金を渡しに行く話が印象的でしたが、ご本人は悲しかったでしょう。生活保護制度や年金制度や介護保険制度など高齢者の生活と直接つながっている制度が改悪されている背景を踏まえ、地域で自発的な活動もこれから必要 となります。 地域で高齢者の健康と娯楽を向上させるために一生懸命頑張っている方々が増えて行ければ、要介護度の低い高齢者あるいは健康的な高齢者の生活課題を見出せ、社会福祉・社会保障制度の改善を図ることができます。地域での高齢者の笑顔と努力を見せて下さって、元気をもらいました。
 鈴木さんは京都市における高齢者大学校の現状と課題を紹介されました。中国でも、老人大学という高齢者向けの再教育を受ける組織があります。日本と同様に、中国での老人大学が健康的な高齢者の生活を充実させ、楽しさを感じさせることを目指しています。少子高齢化の進行と伴い、膨大になる高齢者の社会参加の場の形成が大きな問題となっております。さらに、現在の若者と比べると、高齢者の学歴は比較的に低いこともあります。高齢期に入っても、自分のやりたいことができるよう社会から支えられてくれることが一人一人の高齢者にとって幸せなことだと思います。しかし、社会福祉・社会保障の改悪により、経済面の事情で高齢者大学に参加できなる方々がたくさん出てくるかもしれません。
 全体会では地域の教育力についての報告と議論を聞かせていただき、いろいろ考えるところがありました。子どもは地域での生活の中で育てられてきたので、この生活が一人一人の成長に大きな影響を与えます。日本でのかつての同和地域における子どもの貧困の再生産と差別の問題は、中国では女性に対する差別の再生産は、地域の教育力と関連させてとらえる必要に気づかされました。
 

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